8.7 過去問で合格最低点と問題傾向をチェック

更新日 2021年5月16日


過去問から分かること

前のコラムでは早い時期に過去問を見た人の方が合格率が高いことを紹介しました。

ここでは過去問を分析するときにどんな点に着目すればいいかを解説します。






過去問から分かること:①教科と配点

多くの人は「当たり前じゃん」と思うと思います。

ですが私が出会った受験生の中には高3の秋に、志望校の教科と配点を知らない人がいました。

学校/塾の宿題に追われるあまりに、志望校の過去問を見る余裕がなかったのです。

志望校に何の教科が必要で、どの教科の配点が大きいかは確認しましょう。




過去問から分かること:②合格最低点

最も重要なのが合格最低点です。

倍率や平均点や偏差値を気にする人もいますが、あまり重要ではありません。

例えば東大理科Ⅰ類の倍率は2.5倍とむしろ低いですが、だからといって簡単ではありません。


合否を決めるのは合格最低点のみです。

合格最低点を超えれば合格、超えなければ不合格だからです。

アンケートでは、第一志望に合格した人ほど、合格最低点を意識していることが分かります。




(参考)難関大の合格最低点は意外と低い

難関大の過去問を見て「こんな難しい問題を解けるようにならなければいけないのか」と驚く人も多いと思います。

ですが、実は難関大の合格最低点はあまり高くなく二次試験は50~60%を取れば合格できてしまいます。

こう言っても中々信じてもらえないのでグラフ化してみました。

国立は、共通テスト(センター試験)で合格者の平均点を取ったとして、二次試験の合格最低得点率を算出しました。




どうでしょう?

もちろん実は難関大に合格する人も40~50%の問題は解けていない、と思ったら大分楽に思えませんか?


(参考)偏差値を気にしすぎるな

先生やご両親はよく『偏差値』を気にしますが、それは志望校が違う受験生同士を比べることができる指標だからです。

確かに偏差値と合格率には一定の関係はあります。

ですが偏差値は志望校の合格率を測る直接的な指標とは言い切れません。

難関大の試験問題がクセが強いのに対して、全国的な偏差値を出す模試は特徴のない問題だからです。


実際、アンケートに協力してもらった東大/京大合格者72人の内、16人は早慶/上智MARCH/関関同立などに不合格になっていたのです。

偏差値で全てが決まるとしたらこれはおかしな話です。
(とはいえ、東大/京大に合格する学力がある人が、早慶/上智MARCH/関関同立に受かりやすくはあり、あくまで必ずしもきれいには比例しないという反例をあえて挙げたと思ってください)

学校の定期テスト(出題範囲が分かっているテスト)の偏差値と志望校の合格率にはもっと差があるでしょう。


偏差値を一つの指標とするのは止めませんが、志望校が決まっている人は、直接的には「志望校の過去問で合格最低点を取れるか」を指標にして勉強していくことをオススメします。


(参考)満点を狙うと失敗する?

真面目な人ほど「満点を取らなきゃ」と思いがちです。

それで細かい知識や超難問も、全部完璧にしようとして挫折しがちです。

70点目標と90~100点目標だと、やるべきことが変わります。

例えば共通テストの理科や社会で、70%のところから90~100%を目指そうと思うと、覚えなければいけない知識量が膨れ上がります。

私大日本史でも、それなりの勉強で40%、がんばれば70%は解けますが、90~100%を目指すと「志賀島で金印を見つけた人の名前は?」「満州鉄道のレールの幅は?」など、クイズ選手権並みの問題をカバーするために勉強量が膨れ上がります。

大抵のテストは40%⇒70%にするより70%⇒100%にする方が大変です。

そのため優先順位付けが重要になってきます。



過去問から分かること:③問題の傾向

受験問題は、大学からの「こんな学生に入学してほしい」という意思表示でもあります。

当然大学ごとに問題は違います。


志望校の問題傾向をつかむに当たっては、問題傾向を言語化しておくことをオススメします。

数学で言えば、例えば以下の観点で確認する。
・記述式か、マーク式か
・時間の余裕があるか、ないか

問題のレベルはどの程度か?
・公式を当てはめれば解ける問題
・少し応用が必要な問題
・公式の組み合わせが必要な問題
・飛躍した発想が必要な問題

英語で言えば、例えば以下の観点で確認する。
・記述式か、マーク式か
・時間の余裕があるか、ないか
・英語長文の長さはどのくらいか
・問題の種類(和訳/英訳/穴埋め)
・単語は基礎、標準、応用レベル
・文法は基礎、標準、応用レベル
・リスニングはあるかないか
・自由英作文はあるかないか
・選択問題は、前後の文から解けるか、大きな文脈を読む取る必要があるか


志望校の問題を把握することで、残りの期間で何に集中すればいいかがある程度見えてくるはずです。



例として東大の問題を見てみます。
超難問ばかりだと思っている人は意外に思うかもしれません。


これらは全て東大の過去問です(少し古いですが)

想像していたよりは簡単ではないでしょうか?

英語の問題なら、中学生でも部分点は取れそうですよね。ちなみに東大の採点は激甘で、部分点をたくさんくれると言われています。

東大は、辞書を一冊暗記するような詰め込み型の人より、自分の言葉でちゃんと発信できる人に入学してほしいので、こうした問題になっているのだと思います。

数学もまさかのsin、cosの定義と、加法定理の証明が出ています。

これは「ちゃんと本質を理解しろよ」という東大からのメッセージとも思われます。




過去問から分かること:④頻出の単元

過去問の単元を整理すると、偏りが見えてくることがあります。

ヤマを張りすぎるのも危険ですが、大学からの「ここをがんばれよ」とのメッセージと捉えて、重点的につぶすことをオススメします。

例えば東大物理の出題は以下です
・2019年 力学、電磁気、波動
・2018年 力学、電磁気、熱力学
・2017年 力学、電磁気、熱力学
・2016年 力学、電磁気、波動
・2015年 力学、力学、波動

これを見ると、力学と電磁気をがんばろうと思いますよね。


東大英語の出題分野は以下です
・2019年 要約、文法、英作文、リスニング、和訳、長文読解
・2018年 要約、文法、英作文、リスニング、和訳、長文読解
・2017年 要約、文法、英作文、リスニング、和訳、長文読解
・2016年 要約、文法、英作文、リスニング、和訳、長文読解
・2015年 要約、文法、英作文、リスニング、和訳、長文読解

2020年の問題もおおよそ同じになると予測できますよね?(保証はしませんが)


京都大学の英語では、しつこいぐらい和訳、英訳が出ます(保証はしませんが)

慶応経済学部の日本史は江戸時代以降が多いです(保証はしませんが)

ここまで頻出単元が決まっていることを知っているなら、そこを中心に勉強をしますよね?

だからこそ早めに過去問を見て、知ることが大事になります。

頻出単元を把握し、合格最低点を取るために必要な能力・知識を最短で身につけましょう。



本コラムのまとめ

  • 倍率や平均点や偏差値ではなく合格最低点が大事
  • 満点を狙うと効率が悪い
  • 問題傾向や頻出単元を整理すると勉強優先順位がつけられる